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「な…なに…?」

「さすがにコートを貸してしまえば私も寒いですし。
マフラーくらいなら、どうぞ。」

「あたし、マフラーしてるけど!」

「そうですね。その上から巻いて、耳まで隠せばいいのではないですか?
耳を隠すと少しは温かくなるかと思いますが。」

「み…耳あてないのっ?」

「私が耳あてなどするように見えますか?」

「見えないけど!」

「それならばそのような無駄な発言は控えていただけませんか?」

「無駄って…!」

「これ以上温かくなることはありません。
寒いのが嫌ならばもう帰った方がいいのでは?」

「…でもっ…これ…!」


あたしは空を指差した。
冬場、外に出ることを嫌うあたしはもちろん空なんて見ない。
だから…


「こんなすごいの…あるんだね…。」


指先が手袋をしてても冷たくて、吐く息はもちろん白い。
ぴゅうっと吹いてくる風が時々マフラーの間をぬって首にあたる。
大嫌いな、寒さ。大嫌いな…冬。


それなのに…


「綺麗…なんだもん。」

「…ええ。ですが、明日も見れます。願えば明日も。
だから…。」


夏原の大きな白い手が、そっと伸びてきた。


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