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「じゃあ…温めて!」

「何を、ですか?」

「手。」


あたしは手袋を取った。


「カイロで温めればいいのでは…?」

「だから、あんたって男はどうしてそう情緒がないのよ!
ていうかあんたの体温奪ってやるのが目的なんだから早く温めて!」

「…ではカイロは返却願います。体温を奪われた後に私も回復しなくてはなりませんから。」

「じゃあ1つだけ返す。」

「1つで充分です。」


そう言ってあたしからカイロを受け取ると、夏原はカイロをポケットに放り込んだ。
そしてあたしの両手を、その大きな両手でぎゅっと包む。


「…手袋の意味がまるでありませんね。冷え性なんですか?」

「そう!」

「…冷たい、です。」

「知ってる。」

「それに手、思っていたよりも小さいですね。まぁ、小柄ですし妥当な大きさ…ですか?」

「あたしが知るわけないでしょ?」

「それもそうですね。失礼しました。…ですが、冷たいのは手だけですか?それとも全身ですか?」

「末端は基本的にやばい…お腹とかは別に平気だけど。」

「…なるほど。でしたら今度は靴の中に入れるタイプのカイロを用意しておきます。」

「…ホント、夏原って真面目で…いい奴。」

「今頃気付きましたか?遅いですね。」

「はぁー!?あんたってやつは…!」


そこまで言った瞬間に、包まれた手をそのまま引かれる。
バランスを崩したあたしは夏原の胸でキャッチされる。


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