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聞き慣れない、ちゅっという音。
それが耳元で聞こえたから…


「ってあんたねぇ!何を…!」

「何って、頬にキスしただけですが?」

「はあああ?キスしただけぇ?だけとぬかすかこのタラシ男!」

「…それは聞き捨てならない発言ですね。私はタラシ男などではありませんよ。誰かれ構わずこういうことをするのがタラシ男でしょう。
私はあなたにしかこういうことはしません。したいとも思いません。」

「いっ…いきなりしていいことじゃないでしょ!ていうか本気なの!?」

「何がですか?」

「だから…好き…とか…いうやつ…。」

「ええ。もちろんですよ。」


夏原はそう言い放つとあたしの腕をぐいっと引いた。
そして顎に添えられた手があたしの視線を上げる。


「な…なに…っ…。」

「してもいいならここにもしたいくらいです。」


そう言って、夏原の温い指先があたしの唇に触れた。


「なっ…!」

「キス、そんなに嫌でしたか?」

「はぁ?」

「嫌だったのか、と訊いているんです。」

「それはっ…。」


んな悲しそうな顔で訊くなっつの!卑怯でしょ!


「それは…何ですか?」

「それは…っ…べ、べつに…なんでもない…。」

「…嫌かという問いに対してなんでもないという答えは適切ではありませんね。
というか、いい加減認めたらどうです?今、鼓動が速いのは私ではなくあなたですよ。」

「そんなことっ…!」

「まぁもっとも、私も速いのですがね。
…どうです、聞こえますか?」


そう言って、夏原がぐいっと強く、あたしを抱きしめた。


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