7 STARS
確かに、聞こえる。…というか、伝わる…夏原の鼓動。
丁度夏原の心臓のところに耳があたる。というか、頭を押さえつけられていて心臓の音しか聞こえない。


「わ…分かった分かった!分かりました!ありがとう!好きとか言ってくれてありがとう!じゅーぶん伝わった!だから離し…。」

「ませんよ。なぜ離さなさくてはならないのですか?
嫌なら…突き飛ばせばいいでしょう。どうぞ。」


そう言って夏原は腕を少しだけ緩めた。
…あたしが突き飛ばせる程度に。


少しだけ距離が出来て、風がぴゅうっと強く吹いた。


寒くて、あたしは思わず夏原にしがみついた。
…だって、夏原は…温かいから。


「あ…っとごめっ…。」

「なぜ謝るのですか?私は嬉しいですよ。
本当に…あなたの口は素直じゃないですが、あなたの表情や行動はとても素直ですね。だから好きなんですよ。」

「え…?」


背中にすっと夏原の腕が回る。
顔を上げると、夏原が今まで見たことがないくらい優しく微笑んでいる。


「コロコロと変わる表情、やや刺々しい物言い、寒くて真っ赤になる耳も頬も鼻も…全てが愛しい。
私は本気でそう思っていますよ。」


…『愛しい』だなんてクサいセリフ、生で聞いたら鳥肌が立つって思ってた。
ていうかあたしみたいな人間がこんなこと言われるなんて思ってなかった。
なのに…


夏原があんまり優しい顔で、甘い声でそう言うから。
…っていうか寒いから、あたしはその胸に顔を埋めた。


「…よくそんなセリフ言えるね…。ていうかキャラじゃないんだけど。」

「なんですか、そのキャラじゃないって。」

「ていうか…夏原ってストレートすぎる。」

「あなたにはそれしか通用しないじゃないですか。」


そう言った夏原の手があたしの頭を軽く撫でる。


< 224 / 268 >

この作品をシェア

pagetop