7 STARS
8.1 星よりも好きな人
* * * * * 


「浅野先生。」


この冷たく響く声、何とかなんないの?
そんな風に思いながらも、汐織(シオリ)はゆっくりと後ろを振り返った。


「はい…。」

「この資料、誤字が多すぎんだけど。」

「うわっ…すみません!!」

「直しといて。」

「はいーっ!!」


空中をひらひらと舞う書類をなんとかキャッチした。


「…手渡ししてくれればいいのに。」


去ってしまった背中に向かってそう呟いた。
ホントに性格が悪いんだから、齊藤先生は。
そんなことを思いながら、書類に目を通す。




「…あ…。」


書類には赤でチェックが入っていて、正しい漢字が書かれていた。
…こういうところで助けられるのは不本意だけど、そんなことも言ってられない。


「…ヘンなとこ優しいんだもん。わけわかんないよ。」


というわけで、目下のところ汐織が職場で一番頭を悩ましているのは先輩教師、齊藤篤(サイトウアツシ)先生だったりする。

< 37 / 268 >

この作品をシェア

pagetop