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「…起きるか?」

「力、入りません…。」

「起きたいなら手、貸してやる。」


そう言ってぶっきらぼうに差し出された手を汐織は見つめた。
そしてゆっくりとその手に自分の手を預ける。
汐織の手を包む大きな手がゆっくりと汐織を起こす。
背中に添えられた手も優しい。


起こされたと思ったら手が離れ、同じ手が今度は汐織の目元をぐいっとこすった。


「泣いてる。」

「え…?」

「怖かっただろ。」


何気なく発された言葉のせいで、汐織の涙腺は爆発した。
ぼろぼろと止めどなく流れ落ちていく涙。
しまいには声まであげてしまっていた。


「うわー…もうやだぁ…気持ち悪いっ…やだー!!うっ…ひっく…。」


拭いきれないと判断したのか、目元にあった齊藤の手はいつの間にか頭に移動していた。
リズムよくポンポンと頭を撫でられているうちに、少しずつ落ち着きを取り戻す。
齊藤は、汐織が泣き止むまで何も言わなかった。


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