TRUE
はじまり、
見渡す限りの田園風景。私はその景色を見て、複雑な心境となった。


「はぁ…。本当に何もないのね。」


電車に揺られながら呟く。

周りには誰もいない。隣の車両に老夫婦が乗っているだけ。


東京から電車に揺られて5時間。
私は岩手県の片田舎の病院へ向かっていた。


「やっとついた。」


電車から降りて改札をでると、閑散とした町並みが広がっていた。
溜め息がでる。
こんなに何もないところで生活しなければならないとは、ついていない。

病院までは歩いて30分。タクシーを使えば10分もかからないらしいが、スーパーやコンビニを探しがてら、歩いて行くことにした。

ここには本当に、本当に何もないらしい。
住宅地ではあるようだが、コンビニなんてあるような気配すらない。


「もう、いい。なるようになるよね。」


前向きに考えるしかなかった。もう後戻りは出来ない。
私は前の職場から逃げるように、この系列病院への転勤に同意した。
期間限定ではあるが、それでもよかった。とにかくあの人のいる職場から、少しでも離れたかった。

もともと愛は人ごみやビルの建ち並ぶ街は好きではなかった。
それでもここは何もなさすぎる。

しかし嘆いても仕方がない。愛はこの何もない田舎の風景を楽しむことにした。

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