プロローグ


激しい台風の中、2人の少年が死闘を繰り広げていた。雲から落ちる水滴はほぼ真横といっても下限ではないほど流され、このことから風力の強さが測り知れる。絶え間なく光る雲と、その雷の騒音。だが、この2人の少年には、天候になど全く関心がなかった。


1人はただひたすらに攻撃し、もう1人はただひたすら防ぐ。

……反撃にでる様子なんて全くない。顔に表れるのは哀しそうな表情。それはもう1人の少年の顔にも伺える。


突如、ただひたすらに攻撃をしていた金髪の少年は打つ手をやめ、もう1人の黒髪の少年に口を開いた。

「――んで……――切った――」

金髪の少年がポツリと吹く。

雷と大雨の騒音で黒髪の少年には聞こえていないようだ。ただ怪訝そうな顔つきで首を傾げている。

再度、目に涙を溜めながら言った。

「なんで!!……裏切った!!?」

「…………」

今度は聞こえたようだ。


黒髪の少年は下を向いて、歯を食いしばっている。その顔にもやはり、涙が溜められている。
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