空
――殺らなきゃ……俺が、殺されるんだよ――
……確かに聞こえていた。
「……ごめん……」
これしか、言いようがない。
アルが殺される原因を作ったのは……僕が裏切ったからだ。
今になって後悔する。
……なんで、こんなことになったんだろう……
親友と呼べるほどの少年を裏切ってまで、成し遂げたいことって……
「……ごめん、だと!?――うぅぁぁぁぁあぁ!!」
突如、アルの体から魔力が溢れ出す。そしてその魔力を、体にシバりつけていく。
これは、アルが一番得意といた、身体強化だ。
身体強化とは、言葉のとうり体を強化する魔法だ。
魔力を体の隅々まで巡らせ、細胞を活性化し、強化する。
その状態のまま、アルは剣をかまえ突進していく。速さなど先程の比ではない。
「うぁぁぁぁあぁぁぁ!!」
そのまま目の前の少年へと突き刺す。
――ごめん、アル
僕もまだ、死ぬわけには、いかないんだ――
少年もアルに掛けだそうとする。
だが台風のような大雨と激しい2人の戦いによって、少年は抉れた地面に足をとられる。隙のできた少年に、アルの剣は確実に貫くだろう。
今更避けることも出来ない。
せめてもの足掻きで少年も剣を必死に伸ばす。
そして2人の黒い影が重なった。