「――ごふっ……」


血が、口の中から溢れ出す。

そして、倒れたのは、アルだった。

右胸に少年の剣が食い込んでいる。だが少年にも、アルの剣が貫いていた。


――驚いた

……その疑問を口にだす。

「ア、アル……なん、で!?」

確かに、アルの剣は自分を貫いている。だが心臓じゃなく、反対側の胸にアルの剣が食い込んでいる。あの時、自分は避けるほどの余裕はなかった。じゃあ、なんで……?

「なんで……だろう、な……なん、で、お前を……殺せなかったんだろ」

更にアルは続ける。お互いの口からは、血が止まることを知らないといったように、溢れでてくる。


「お前、には……俺の、ぶんまで……生きて、ほし……だ」

「もう……しゃ、しゃべらない、でよ」

雨とは違う、何か生温かいものが、頬を伝う。

「な、んだ……泣いてんの……かよ……へっ、泣き虫は、変わらない、よな」

突如、いきなり起き上がったアルにドンッと突き飛ばされる。

「――な、にを!!?」

足を、踏み外した。

後ろは崖だ。下は荒れ狂う荒波だ。落ちないように、必死に捕まった出っ張りを握りしめる。
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