空
「お前、は……やさし、すぎんだ、よ……俺が、死なない、ように……右側に、突き刺すなんて……確、かに……こんな生倉が、突き刺さっただけで、俺は、死なない……でも、どうせならお前に、殺されたかった……」
今ある力を振り絞って、アルは少年の手を、掴んでいる所から指を一本一本引き剥がす。
「アル、や、やめて!」
「これは、約束だ……俺以外に、負けんじゃ、ねえぞ」
三本、剥がされた。
「俺たちが、会うことは、もう、ねえだろう」
四本目、剥がされた。
「これからは、自由に、生きろよ……さすが、に……お前の、血のついた剣、崖に落ちたかの、ような、血の綴り後……お前が、生きてるとは、思わねえだろ……だが、俺は、生きてると、信じてる」
もうすぐ最後の一本が剥がされる。
「――――!!!!」
少年が何かを叫んでも、アルは止めようとはしない。
「あぁ、最後に、もういとつ……絶対に、死ぬんじゃ、ねぇぞ……ラル……」
初めて、アルに名前を呼ばれた。
でも……別れ際にって、それは、ないよ……
全ての指が引き剥がされた。
「――アルゥゥゥゥゥ!!!!」
親友の名を、喉がはちきれんばかりに叫んだ。だがその声も、雷の騒音に遮られる。
そして、最後に見たのは、またもや、初めて……アルの……泣き顔だった……
そして突如、雲が引き裂かれ、茜色の光が、アルの泣き顔を、彩った……