大事なこと



……真っ白な空間……


360度見渡しても、延々と続く白。平衡感覚も分からない……立っているのか、浮いているのかも分からないそんな空間に僕はいる。
突然、過去の光景が蘇ってくる。

(これが、走馬灯って、いうやつ、なのかな)

懐かしい光景が見えてくればくるほど、何か内からこみ上げてくる感覚に身を委ねてしまう。僅かに温かい感覚も、心を満たしてくれる。

なんで、こんな状態になっているのだろうか、覚えている限り思い返してみる。




――あぁ、そうだ。

(僕は、強く、なりたいから、屋上で素振りを、してて、屋上から、落ちたん、だっけ……
それじゃあ、もうすぐ死ぬ、ってこと、かな?……まだ、死にたく、なかったな……)






「お前はバカか」

いきなり聞こえてきた声によって、ベッドで寝ていた黒髪の少年……ラルは目を開ける。

目前に広がるのは真っ白な天井と、少し顔をずらせば僕の寝ているベッドに両腕を組み、枕代わりにして眠っている少女がいる。その隣には白衣を着た、黒髪を腰まで伸ばしている女性がいた。

この女性を見て、此処は医療室だと悟った。
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