空
「あの、先生……僕は、誰に助け、られたのですか?」
「お前の横で眠っているだろう。イリアが頭から血を流して倒れているお前を、ここまで運んできてくれたんだ」
そこで僕は納得してしまう。
イリアと呼ばれた少女の服には、僕のであろう血がぬめりついている。
「しかし、お前はよっぽどバカなんだな。そこに掛けてある剣と、お前の手のマメをみれば……大方寮の屋上で素振りをしてて、フラついて落っこちたんだな。
……先生はお前みたいなバカは好きだが、すぐに命を投げ出す奴は嫌いだ。
……なにが、『僕は死ぬのかな』――だ。イリアが運んで来てなかったら、本当に死んでたぞ。
もっと自分の命を大事にしろ」
「あの……ありが、とうございます」
「それを言うなら此処まで運んで来てくれたイリアに言うんだな。先生は睡眠時間まで削って、お前を今まで看てやったんだから、イリアも先程までお前の手を握って、ずっと起きるのを待ってたんだからな」
それだけ告げるとあふぁーっと言う欠伸を残して、先生は足早に医療室を後にした。