先生が出ていった後、僕も帰る支度をする。血を流しすぎたせいかまだ頭が少しぼーっとしているが、支度を続ける。

(イリアさん、には悪いけど、明日……御礼をすれば、いいか…………皆も、心配してる、だろうし)

皆、というのは孤児院の人達だ。寮の屋上で剣の素振りをしていたといっても、べつに寮に住んでいるわけではない。ただでさえ、寮に住むというのはそれなりにお金がかかる。それなのに、途方に暮れていた僕をお世辞でも裕福とは言えない小さな孤児院に居させてもらってるだけでも、凄く有り難いことなのだ。そのうえ、寮に住みたいなど図々しいことこの上ない。


今でも、こんな僕を心配してくれているのだろう。

そう思うと凄くいたたまれない。

ベッドに掛けてある剣を腰に差し、未だ寝ているイリアを背負い、医療室を出て行く。
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