殲-sen-
その先が気になって、重い足を引きずりながら急ぎ足になる。
そして、森を抜けた先には、


小さな村があった。

数える程しか家は立っていないが、確かに村があった。

人に会えるという安心感で、長い間張っていた気が少し緩んだ。

フラフラと足元をふらつかせながら、建物に向かう。

建物に次第に近づくと、視界に人が使う井戸や掃除をするための箒や整えられた庭等、生活感のあるものが見えてくる。

さらに近づき、建物に囲まれた道の中心まで来た。

……?

そこで感じた違和感。

何かが普通と違うような、変な感じがする。

少し疑問に思うが、特にこれといったものがあるわけではない。

ただの直感的な何か。

言い表せない不安にかられながら、建物を見回す。

今は夜なので、人が外にいないのは当然で、戸も全て閉まっていてシーンと閑散としているのも分かる。

でも、何故か人の気配が感じられないような…。

ここには誰も住んでいない。
そんな気がしてならない。

そう思いながらも、ある家の戸を叩いて助けを求めてみることにした。

「すみませんっ!!誰かいませんか!?」

大声で叫んで呼びかける。

ドンドンと大きな音をたてて戸を鳴らすのに、誰も出てくる様子はない。

単に寝ているだけなのだろうか。

そこの家は諦めて、他の所にも助けを求める。

しかし、どこも同様に出てくる様子はない。

「……なんで?」


ここは、全て廃墟なのだろうか。
辺りの家の外観を見ると、そこまで傷んでいなく、誰かが生活していてもおかしくないというのに。

人がいないと気づくと途端にやるせない気持ちになり、その場に座り込む。

もう、その現実に歩く気力だって存在しない。

どうして、こんな事になったのだろうか。

考えてみても、答えは見いだせない。

このまま、全部、女の人の所辺りから夢だったらいいのに。

自分の感覚がそれは絶対ないって事を証明していたって望んでしまう。

この地面の感覚や足の痛み、どう仕様も無い疲労感。
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