殲-sen-
「だから、それじゃあ家に―――」
「おそらく、帰ることは出来ない。」
その言葉に頭の中が真っ白になる。
呆然とする私を見て、少し考えたような素振りを見せたあと、青年は言葉を付け足す。
「今の段階では、だ。他のものと合流すれば、この世界のことも少しは分かるだろう。」
「…他にも何人かいるんですかっ!?」
「……ああ、数人連れてこられたらしいからな。
他のものは皆同じ場所にいるはずだ。
お前だけ場所が違ったらしいからな。」
……全く訳がわからない。
「運が悪いって言ったのはそういう意味ですか?あと、何故連れて来られたんですか?」
「……いや、違う。お前は不手際で連れてこられたからだ。…確かお前以外にももう一人いたらしいが。
他の者が連れてこられた理由はさっきと同様に、教える気はない。」
不手際…と言う言葉にも引っかかったが、もう一人いると言う言葉の方が気になった。
それは…由実ではないのか。
問い詰めたくても、青年の口調から、そこまで詳しくは知らないことが分かる。
早く他の人と合流しなくては。
「……他の人は何処に?」
教えてくれるか内心不安に思いながら聞いてみると、青年はある方向を指さして、
「この方向に直進しろ。ここからさほど遠くない。」
と、意外にも教えてくれた。