殲-sen-
青年は指を差した後直ぐに、
「俺が教えてやれるのはここまでだ。…そろそろ行かなければならない。」
青年はもう話すことはないというように、私のいる方向とは反対に向きを変えて歩き出した。
彼はどうやら私に情報を与えただけで、特に助けてくれる気は無いようだ。
青年は少し歩いた後、ふと何かを思い出したように立ち止まって振り返る。
「…そういえば、お前は感覚だけは鋭いらしいな。
この建物には入らなくて正解だ。
仲間の場所に走っていけ。
そろそろ気付かれる。」
そう言うとまた歩きだした。
「えっ!?貴方はどうするんですか!?一緒に行かないんですか!!」
大声で呼び止めるものの、青年は振り返らず、そのまま行ってしまった。
あの人はなんなのだろう。
さっきは訊かなかったが私のことを『一般』と言った。
彼は雰囲気から独特で、どこか現実離れしたところがあった。
それに、彼の言った『気付かれる』とは…何に?
しかし、どう考えても善いものではないと思う。
思えば先程より違和感が大きくなった気がする。
何か危険を感じた私は、教えられた方向に向かって走りだした。