殲-sen-

「そんなわけないでしょ!!希咲ちゃんを一緒にしないでよ!!」

私が否定をする前に由実が怒鳴った。

由実は非常に怒っている様子で、少し目を潤ませている。


そんなに過敏になるほどのことなのか…。

いまいち状況が把握できずに一人呆然とする。

若い男性は由実の言葉を聞くと少し表情を和らげて、

「…そうだよな。あいつらだったら俺達は既に襲われてるよな。
それに、こんなに普通の見た目じゃないし。

…悪かったな。」

と、一人で納得したように頷いた。

若い男性がほっとしている一方で、彼が何気ないように零した言葉に驚愕する。

『襲われる』、『普通の見た目ではない』

何それ…。

「…それって、どういう事ですか?」

そう聞こうとしたとき、今まで黙っていた30代くらいの男性が口を開いた。

「その話は中に入ってからにしようよ。」

その口調は優しく、人の良さそうな感じがした。

「…そうだな。」

若い男性はその言葉に頷くと、私たちに建物の中に入るように促した。
< 18 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop