殲-sen-
「そんなわけないでしょ!!希咲ちゃんを一緒にしないでよ!!」
私が否定をする前に由実が怒鳴った。
由実は非常に怒っている様子で、少し目を潤ませている。
そんなに過敏になるほどのことなのか…。
いまいち状況が把握できずに一人呆然とする。
若い男性は由実の言葉を聞くと少し表情を和らげて、
「…そうだよな。あいつらだったら俺達は既に襲われてるよな。
それに、こんなに普通の見た目じゃないし。
…悪かったな。」
と、一人で納得したように頷いた。
若い男性がほっとしている一方で、彼が何気ないように零した言葉に驚愕する。
『襲われる』、『普通の見た目ではない』
何それ…。
「…それって、どういう事ですか?」
そう聞こうとしたとき、今まで黙っていた30代くらいの男性が口を開いた。
「その話は中に入ってからにしようよ。」
その口調は優しく、人の良さそうな感じがした。
「…そうだな。」
若い男性はその言葉に頷くと、私たちに建物の中に入るように促した。