殲-sen-
建物の中は二階建てで、置いてあるものは全て一昔前の日本の物のようだ。
外観から察する通りに傷んでいて少しかび臭く、歩けばギシギシと軋む音がする。
しかし、外とは違いどこか安心感があった。
私たちは多分居間であるだろう、一番広い部屋に連れてこられた。
その部屋の隅のほうで一人の小さな男の子が小さく蹲っているのが視界に入った。
居間に着くと若い男性が座るように支持し、それに従う。
全員が座ると、若い男性は私が何も知らないだろうからとこの建物と状況について軽く話してくれた。
私以外は気付いたときには此処にいたという。
そして、この建物内を調べると分かったことがあるらしい。
此処には何故か全てが揃っている。
こんな廃屋みたいなところなのに、電灯はついているらしい。
それは、水道や電気等の生活に必要なものがすべて使えるのだという。
そういえば、この居間にも何故か蛍光灯が付いている。
今まで気に留めていなかったが…
しかし、こんな山奥の人が住まないようなところに水道ならまだしも電気さえ付いているなんて…
皆も不思議に思ったらしく外を調べたが、水道などが通っている形跡など見当たらなかったらしい。
通常ならありえないことだと思う。
私がそう言うと、由実は少し深刻な顔をして頷いたが男性二人は曖昧な態度をとるだけだった。
食事に関して聞いてみると不自由ないとのことだった。
何故かと問うと、じゃあ、お前今腹減ってるか?と言われ、ハッと気付いた。
時計は持っていないから正確な時間は分からないが、体の感覚だけで言っても何時間も経っている。
しかも、私は此処に来るまでにかなりの体力を消費して、空腹感があってもおかしくなかったはずなのに。
でも、食事をしなくて生きて行けるのだろうか……。
そう思ったが、また男性二人がなんでもないことのように平然としているので黙っておいた。