殲-sen-
chapter1
「…ここらへんの景色、懐かしいな。」
――――ブルルル、と舗装されていない道を行くバスの後ろ姿を見送りながら由実が言う。
私たちは夏休み前に立てた予定通りに、由実の祖母の家を訪れようとしていた。
そして今はバスを家に一番近い駅で降りた直後である。
今回は高校生二人だけの外泊ため、一泊二日の少し短く思える旅行になったしまった。
私たちは必死に延そうとしたけど、親がそれを許さなかった。
特に、提案者の由実の方が外泊自体をよく思ってなかったらしい。
反対されたとき、由実が断固として譲らなかったため折れてはくれたらしいが。
その事で、由実は謝ってきたけど、外泊出来ただけで私は十分だ。
短い分思い切り満喫しようと考えている。
「じゃあ、行こっか。」
そういうと由実はゆっくりと歩き出した。
ここからは道を知る由実が先導して前を行く形になり、私はそれについて行く。
「この先、山の中に入るんだけど、足場が悪い所もあるから気をつけてね。」
そう言って、心配そうに首を傾げる由実に『大丈夫だよ。』と返す。
すると、由実は『本当に?』とまた聞き返してくる。
今回も由実の癖が出た、とクスリと笑う。
それを見た由実は、何かを察したのか、少し拗ねて頬を膨らませた。
「何笑ってるの?心配なだけだもん!」
そういう由実に笑いながら『分かってるから。』というと、さらにご機嫌を損ねてしまった。
ちらりと、拗ねた由実を見ながら思う。
昔から由実は私に対してだけは過剰に心配性だ。
時々行き過ぎることもあって驚いてしまうくらい。
それを疎ましく思った時もあるけど、今ではちゃんと理解できる……自分って凄く大切にされてるんだなあって思う。
人よりも心配するのはそういう事だって分かるし、私が特別なんだってことが嬉しい。
実際に、全体的に他の人よりも私を優先してくれる部分がある。
そして、私もそれに応えている。
今思えば、私たちは中学校のあの時から、私たちは唯一無二の親友だったのかもしれない。
そう…
たしかあの時は――――――