殲-sen-
あらかたの説明が済んだ後、
「まず、自己紹介からするか。
…これから一緒に暮す相手のことぐらい少しは知っておいたほうがいいだろ。」
と若い男性が言った。
その言葉に目を丸くする。
「……私、ここで暮らすんですか?」
初耳だ。
願ってもない申し出だがいいのだろうか?
いや、私は行くところがないのだからここで生活させてもらわないと困る。
私の言葉を聞くと、若い男性は面倒くさそうな顔をして、
「ここで暮らさなかったら、お前どうするんだよ?
俺の推測からするに、お前は本来ここにくるはずだったんだ。
それに、多分この建物の性質からすると、お前はここでしか生活できないと思うが。」
「い、いや、そう言ってくれると思わなかったので……。
ここで暮らさせてください!!お願いします。」
深々と頭を下げると若い男性は、
「こっちも人数がいたほうが助かるんだよ。」
と言って頭を上げるように促す。
それから、一人ひとり自己紹介をした。
最初に若い男性から、
「檜山修也(ひやま しゅうや)。今年で23になる。『a.f』って言う五人組のロックバンドのヴォーカルをしてた。名前は別に何て呼んでもいいから好きに呼べよ。」
と、淡々に告げていく。
『a.f』ってどこかで聞いたことある気が―――
確か……
「もしかして、あの今すごい人気のある『a.f』ですか!?」
世間で今一番騒がれているあの有名なアーティストなのだろうか!?
そういえば、よく見ると檜山さんはよくテレビで見る顔だった。
そう言うと、隣に座っていた由実が吹き出した。
「今まで気付かなかったの?私最初に見た時からあの人だって分かったのに…。」
くすくす笑う由実に対して、檜山さんは微妙な顔をしている。
「…まぁ、そういうことだ。」
と、すぐに他の人も自己紹介するように言う。
すると、中年の男性が名乗りでた。