殲-sen-


「じゃあ、僕がしようか。田代義夫(たしろ よしお)。

好きなように呼んでくれて構わないからね。僕は今年で36になるよ。しがない会社員だけどよろしくね。」

そう言って私に握手を求めてきた。

すごく優しそうな雰囲気を持つ人だ。柔らかな印象を受けた。

田代さんの自己紹介が済むと、檜山さんがチラリと先程から蹲っている男の子を見る。

「…あいつは、小鳥遊夕(たかなし ゆう)。確か…小5だと言ってたな。」

「あの子大丈夫なんですか?」

見たところ、外傷は何も無いように見えるが、蹲ったままで何も言わない。

「…安心しろ。今は寝ているだけだ。

一応俺達の居るところで寝るように言ったらあの体制で寝ただけだ。

起きているときは割と普通にしてる。」

よく見ると深い、規則正しい呼吸の動きをしている。

本当に寝ているだけのようだ。


その後、私は由実を知っているので由実の自己紹介は省略し、自分について話した。

と言っても、皆少しで済ませたので、私もその程度で留めた。
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