殲-sen-
「ここから出る方法があるんだね…っ!?」
私の言葉に周りの雰囲気が軽くなる。
見ると、田代さんは歓喜していて、檜山さんは表情が少し明るくなっていた。
その言葉はここから出られる、つまり生還を意味していたからだ。
しかし、私の気持ちは少し重くなる。
「でも、手がかりは全然ないんですけど…。」
何も分からないのに少し期待させた形になってしまい、恐縮してしまう。
具体策なんてないのに。
少し俯いていると、頭にポンッと重みがかかった。
それに驚いて顔をあげると薄く微笑んだ檜山さんがいた。
「ありがとな。その情報だけで今は十分だ。」
その言葉にホッとする。
どうやら私の心境が分かったみたいだ。察しのいい人だ。
「…しかし、具体的に知るためにはまたそいつと接触しなきゃならねぇな。
あと、此処にいるかは分からないが、お前らの見た女も見つかれば大きな手掛かりになる。」
具体策…にはならないが、檜山さんは私たちのすべき事を決めてくれた。
「そうですね。でも、何処に行ったか分からないし…。」
「そうだな。
それに無闇にここから出るといつ襲われてもおかしくねぇからな…。
そいつはどうして一人でそんな場所に居たんだろうな…?」
檜山さんの言葉に田代さんが反応する。
「やっぱり僕達とは違うんだよ。
もしかしたら、その人は人間ですらないのかもしれないね。」
田代さんの言葉は一理ある。
あの時に感じた現実離れした何かは、そのせいかもしれない…。