殲-sen-

「ここから出る方法があるんだね…っ!?」

私の言葉に周りの雰囲気が軽くなる。

見ると、田代さんは歓喜していて、檜山さんは表情が少し明るくなっていた。

その言葉はここから出られる、つまり生還を意味していたからだ。

しかし、私の気持ちは少し重くなる。

「でも、手がかりは全然ないんですけど…。」

何も分からないのに少し期待させた形になってしまい、恐縮してしまう。
具体策なんてないのに。

少し俯いていると、頭にポンッと重みがかかった。

それに驚いて顔をあげると薄く微笑んだ檜山さんがいた。

「ありがとな。その情報だけで今は十分だ。」

その言葉にホッとする。

どうやら私の心境が分かったみたいだ。察しのいい人だ。

「…しかし、具体的に知るためにはまたそいつと接触しなきゃならねぇな。

あと、此処にいるかは分からないが、お前らの見た女も見つかれば大きな手掛かりになる。」

具体策…にはならないが、檜山さんは私たちのすべき事を決めてくれた。

「そうですね。でも、何処に行ったか分からないし…。」

「そうだな。

それに無闇にここから出るといつ襲われてもおかしくねぇからな…。

そいつはどうして一人でそんな場所に居たんだろうな…?」

檜山さんの言葉に田代さんが反応する。

「やっぱり僕達とは違うんだよ。

もしかしたら、その人は人間ですらないのかもしれないね。」

田代さんの言葉は一理ある。

あの時に感じた現実離れした何かは、そのせいかもしれない…。
< 24 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop