殲-sen-
各自が考え込み、少しの沈黙が訪れたときふと先程からずっと気になっていることを聞く。
「檜山さん…さっき言ってた『襲われる』ってなんですか?」
最初にあった時も言っていたが、一体何に『襲われる』のだろうか。
此処には…何がいるのか。
すると、由美と田代さんはあまり聞きたくないようで、視線を逸らす。
もしかしたらすでに知っているのかも…。
そう聞くと、檜山さんはすこし間を置いてから話し始めた。
「お前……どっから此処に来た?」
「えっと…あっちの方から。」
そう言いながら来た方向を指さすと、檜山さんは眉を顰めた。
「そっちに建物が密集しているところがなかったか…?」
なんで知っているのだろう?
「…ありました。」
そういうと田代さんが、入れ違いになったのかもね、と言った。
「お前…そこの建物の中に入ったか?」
「いえ…入りませんでした。なんか嫌な感じがしたので。」
檜山さんは片方の眉をぴくりと上げる。
「…ふーん。お前、運が良かったな。俺はあの建物の中に入った。」
話によると檜山さんは、皆が目覚めた後、一人で周りを調べたらしい。
何故かと問うと、夕君と由実がいるため、田代さんは此処に残ってもらったのだという。
その時にそこに辿り着いたんだそうだ。
一人でそんなところに行くなんて、肝が据わってるんだなぁ…。
自分もそのような状況にあったが、あの時はなりふり構ってられなかっただけだ。
檜山さんは建物に入った。
そして、何かを見た。
そういえばあの青年も運がよかったなと私に言った。
では、あの建物には『良くない者』がいたということだろうか…。
「知らないほうが幸せっていうが、この状況でそうは言ってられないしな。
心構えをしておいたほうがいい。…………夕には絶対言うなよ。」
そう釘を刺され、ごくりと息を呑む。
見れば檜山さんの顔色が先ほどより悪くなっている気がする。