殲-sen-
私たち一人ひとりに視線を送る。
その目は覚悟を決めた鋭い目で、ドキリとする。
全員を見終えた後、田代さんに体ごと向き直り、
「…ずっと考えていた。
俺が出る間は田代さんには、夕達をお願いしたい。」
真摯な瞳を受け、田代さんは動揺した素振りを見せる。
「そんな奴がいるところに一人で行くなんて危険すぎるよ!!僕も行くよ!」
檜山さんは首を横に振る。
「此処は安全な気がするが、何が起こるか分からない。
夕は外には出せない。だから、いざというときに守ってやらないといけない。」
確かに、と田代さんはその事を理解しているが未だ納得はしていない。
「だったら僕が…。」
「悪いが、田代さんよりも俺のほうが化け物の対処ができる。
最初に俺が外に出たときのように、夕達を見てもらいたいんだ。」
きっぱりと言われると、田代さんは何も言い返せない。
田代さんと檜山さんを比べると明らかに身体的にも精神的にも檜山さんの方が強い。
田代さんは気の弱い人らしく、きっと化け物に出遭った時に素早く対処できるか分からないことを自分でも理解しているのだろう。
この話の最中も恐怖で顔を歪めていた。
「この中で外を調べるのに最適なのは俺だろう。
…一度化け物を見てるしな。」
そういう檜山さんの顔色は非常に優れない。
覚悟は出来ているが、決して平気であるわけではない。
檜山さん自身も一人で行くには危険すぎることを知っているのだ。
しかし、他の人を危険にさらしたくないとも思っている。
それに私達じゃ行っても何も出来ないと思っているのだろう。
ある意味、諦めに似た覚悟なのだろう。
これが彼なりの最善の策だったのだ。
隣の由美は黙ったままで、私に寄り添っている。
ぎゅっと袖を握ってきた手が震えている。
きっと私と同じ心境なのだろう。
このまま檜山さんを一人で行かせれば、彼は二度と帰ってこないかもしれない。
急に由実が今まで俯いていた顔をあげ、
「―――私が」
「行かせてください。」