殲-sen-
由実が驚いた顔をして私を見る。
私が由実の言葉に自分のを被せたからだ。
きっと由実は、
―――私が行きます。
そう言うつもりだったんだ。
人一倍責任感のある彼女のことだ。
きっと一人で行かせる訳にはいかないと思ったのだろう。
由実は途端に泣きそうな顔になる。
「希咲ちゃん…何言ってるのか分かってるの?」
さっき自分だって言いかけたくせに。
私が言うとそうやって…。
正直、由実より私のほうが遥かに体力もある。
由実は臆病だし、化け物に遭っても襲われるだけだろう。
檜山さんが私を睨んだ。
「由実の言うとおりだ。自分の発言に責任を持てよ。
この世界でも死ぬ可能性はあるからな。」
「分かっています。でも、一人よりも二人のほうが絶対いいです。」
「危険だって理解しているのか?もし此処で何かあれば二度と元の世界に戻れないかもしれねぇんだぞ?」
檜山さんの言葉にグッと言葉が閊えた。
その目は軽はずみな事を言うなといっている。
少し気圧されるが、自分の意志を貫きたい。
私だってちゃんと考えくらいはある。
「そんなの…檜山さんだって同じじゃないですか。
檜山さんがいなくなれば、きっと私たちも無事に生還なんて出来ないと思います。
戦う覚悟だって…ちゃんと決めます。」
強く見返すと檜山さんは、少し目を見開いて驚く。
そう言われると思ってなかったのだろう。
「だから…私に行かせてください。」