殲-sen-
「…ない。そんなの一度も無いっ!!」
それでも由実が未だ不安なのは、この状況だけでなく昔のトラウマのせいでもあるだろう。私はそれを理解した。
「だから…私をあの子達と一緒にしないで?」
最後に由実を裏切ったあの子達。
私は違う。
いつだって、由実に真実のみを伝えてきた。
由実は自身に深い傷を負わせたあの子達と私を一緒にするのだろうか。
そう問いかけると、由実はハッとした表情になり、申し訳なさそうに、
「…ごめんなさい。希咲ちゃんを信じる。」
そう言ってくれた。
「ここから二人そろって出よう。」
由実がこくりと頷く。
その顔には先ほどまでの暗色が消えていた。
ホッと安堵する。
そうしたら、ぽろっと思っていたことが出てしまった。
「……………お風呂。」
「へっ?」
由実が素っ頓狂な声を出す。
意味が分からないという顔をする。
私はおどけた様に、
「…ご飯食べなくてもいいくせに、疲れるし、汗は掻くなんておかしいよね。」
そういって笑えば、くすっと吹き出して、
「わかった!希咲ちゃんが一番風呂ね。
…絶対戻ってきて。」
「分かってる。」
くしゃっと由実の頭をなでて心を決めて立ち上がる。
「…じゃあ、行きますか。」
檜山さんに視線をやれば、苦笑いを浮かべている。
「お前……本当に高校生かよ。」
「……ええ。」
失礼な、細い目をして薄く睨めば、
「頼りになるなぁこりゃあ…。」
檜山さんの血色は少し回復していた。