殲-sen-
中は二階建ての普通の一般的な内装で、一階の台所、居間、便所等におかしな造りはない。
この家には小さな子供が住んでいたのか、人形などの玩具が所々に投げられたように置いてある。
台所には、何かの食べかけが放置されていて、腐敗による異臭がしていた。
他には、特に気になるものはなかった。
個々の部屋の私的なものも調べるが、何も手がかりは得られない。
1階を一通り見た後、
「何もいねぇな…。俺は建物に入って直ぐに奴等を見つけたのに。」
この建物にはいないのか。と、檜山さんが呟いたとき、
―――――――っ!!
静寂に包まれる違和感。何かが蠢く気配。
頭上からひしひしと伝わる狂気。
「檜山さん…上に居ます。」
潜めて告げると、檜山さんの表情に緊張の色が現れる。
「わかるのか…?」
「なんとなくですが…。」
檜山さんは、口を噤み感覚を研ぎ澄ましているような素振りを見せた後、
「俺には分からねぇが、本当なら二階に何かありそうだな。」
廊下の突き当たりにある階段に向かって、足音を立てないように進む。
「絶対に離れんなよ。」
その言葉にこくりと頷き、私たちは二階へ上がる。
二階は大きな廊下が一直線に続いていてそこから派生的に部屋が分かれているようだ。
まず、檜山さん一番手前にある襖に手をかける。
隣でごくりと息を呑む音が聞こえた。
ゆっくりと開ける。
そこは書庫代わりに使用していたのか、達筆で書かれている書物が散乱していた。
少しずつ中に入り、辺りを見回す。
変なところは此処にはない。
檜山さんは、少し屈むと落ちている書物の一つを拾う。
中を開いてパラパラと読み進める。
「これは…日記のようだな。」
ポツリと呟く。
そして、ある程度読んだ後に動きを止める。
何かと思い、傍によって書物を覗き込む。
すると、血のような赤黒い字で文字が書かれていた。
達筆すぎて読めない私は、檜山さんの様子を伺う。
すると彼は、次第に顔を歪めた。
「…普通じゃねぇ。家族で…こんな。」
一体何が書かれているのか?
「あの…何が――――」
そう言い掛けたその時、