殲-sen-


ガタンと大きな音がして、二人その音がした方向に振り向く。

声を潜めると奥の方で小さな呻き声のようなものが聞こえた。
それ後、水っぽい足音が次第に大きくなる。

檜山さんは持っていた書物を握り締めながら、ガシッと私の腕をもう片方の手で掴む。

「とりあえず隠れるぞ!」

私は腕を引かれて本棚の裏へ隠れる。

その直後にドンッと大きな音をたてて襖が外れた。


ア”ア”ア”……



「んんっ…!」

声が出そうになって、檜山さんに押さえつけられる。

襖を壊して入ってきたのは、
胃の辺りが抉られた様に肉や内臓が露になっていて、腕の関節がおかしな方向に曲がっている、人と呼ぶには異形過ぎるものだった。

顔をみても変形していてよく分からなかった。



「……んっ。」



檜山さんは、私が見えないように奥へと体ごと押し込む。

はぁっ、と耳元で檜山さんの押し殺したような吐息が聞こえる。



異形のものは、奇声を発しながらゆっくりと部屋の中を歩く。



どうやら私たちが居るのは分かっても、正確な位置は分からないみたいだ。


腹部から流れる血によって、ピチャピチャと音が鳴る。

その音から、だんだんこちら側に近づいて来ているのが分かる。



――――どうしよう。
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