殲-sen-


ズチャ、



ズチャ、



ズチャ




…ピタ


急に足音が鳴り止む。
ア゛ア゛…、という奇声の中にグフ、と笑い声が含む。


―――――これってっ!?


見つかったと思い、小太刀を取り出す。

しかし、動こうとすると、ギュッと強い力で抱きしめられた。

一瞬どうしたのかと思ったが、これは動くなという合図なんだと気づいて、そのまま静止する。

私からは何も見えないため、どうなっているのか、どこにいるのか全く分からない。

檜山さんはずっと後ろを向いてて表情は分からない。

暫くすると、再びズチャズチャと足音がなり、それは次第に小さくなっていった。


足音が止むのを確認すると、檜山さんの腕が緩められて解放される。

「気づかれなかったですね…。」

そうホッとしながら言うと、檜山さんはきつそうな顔をして、

「…違う。」

私に振り返ると、握り締めていた書物を差し出す。

「これ持ってろ。それから…急ぐぞ。」

差し出された書物を手に取ると同時に、腕を捕まれ部屋の出口まで走り出す。

「檜山さん…っ!!そんなに音をたてたら気づかれます!!」



「もう気づかれてんだよ…っ!!」
< 36 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop