殲-sen-
廊下に着くと同時に聞こえる異音。
先ほどまでの奇声以外にも…複数。
「くそっ……数が多すぎるな!!」
檜山さんは私を階段側に押しやる。
「先に逃げろ!!後で追いつくから!!」
檜山さんは刀を鞘から抜く。
「ハッ、こんなの使ったことねぇよ。」
刃先を廊下の奥に向ける。
異形の者が部屋から次々と出てきた。
私も戦います。そう言いたかったが、この狭い廊下では邪魔になるだけだ。
早く追いついてください、と心の中で呟きながら階段を駆け降りた。
玄関に通じる大きな回廊に辿り着くと、一直線に走る。
その途中で、劈くような叫び声が聞こえた。
男か女かも分からぬ濁った声に、もしかしたら檜山さんではと一瞬頭に過ぎる。
くっと、立ち止まりそうになったが、檜山さんの気持ちを無碍にしたくないと思いとどまった。
玄関の外に出ると、森の方に向かい、ある程度距離をとったところで止まった。
荒い呼吸を必死で整えながら、建物の様子を伺う。
檜山さんはまだ出てこない。
死んでしまったかもという恐怖で視界が少し揺らぐ。