殲-sen-
暫らくして諦めかけたとき、建物から檜山さんが現れた。
よろよろとおぼつかない足取りで、その服は血に塗れて真っ赤に染まっている。
ヒュッと息を呑む。
彼は酷い傷を負っているのか。
檜山さんの後には異形の者は現れなかったので、急いで其処へと走る。
ある程度近づくと、檜山さんは私に気づき、薄らと笑う。
「大丈夫なんですか…!」
駆け寄って、フラフラしている檜山さんを支える。
「…怪我はしてねぇよ。」
小さく呟く檜山さんに、ホッと安堵する。
だとすると、この血はすべて返り血なのだろうか。
近くまで行くと、檜山さんから発する血の様な腐敗したようなきつい臭いが鼻を通る。
檜山さんを支えながら森の入り口まで辿り着くと、檜山さんに制されてその場に腰を下ろした。
「…顔色悪いですよ?やっぱり怪我してるんじゃ…。」
「いや、全くしてねぇよ。……ただ、」
どうしたんですか?と首を傾げる私に、一息ついて、
「…あんな気持ちの悪いものを斬っちまったんだ。それも、いくらぐちゃぐちゃだって人型のものを。」
檜山さんは二階に居た人型は動きが遅く、斬れば直ぐに動かなくなったと言った。
それは幸運なことだと思ったが、人型のものを斬るということが彼の精神面を病ませていた。
「…なんか、自分が怖ぇな。」
…………
スッと手を思い切り振り上げる。