殲-sen-
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「…ふぅ。」
ちゃぷん、と音を立てて浴槽の中に入る。
湯は丁度良い温度になっていた。
その事を案内してくれた由実に戸越から伝えると、嬉しそうな声音の返事が返ってきた。
その後由実は服を近くに置いておくと告げ、居間に戻っていった。
お湯に浸かり一息つく。
全身に染み渡る暖かさに、さっきまでの緊張感が少しだけ解けて、その分疲れがどっと出た。
当たりを見回すと小屋の風呂は思っていたよりも綺麗で、木が多少傷んではいるものの不自由はしない。
其処に一つだけある窓はしっかりとは閉まらず多少開いたままなのが気になったが、この状況で細かいことは言ってられないだろう。
…そういえば、この風呂はどうやって焚いたのだろうか。
由実と田代さんが薪などを扱った形跡はない。
浴槽の近くを見ると、温度調節が出来るような装置があった。
これは現代に近いものではないのだろうか。
…ずっと思っていた。
此処は時代が混合しているのではないのだろうか。
全ての物の時代設定が曖昧で、何処か不安定だ。
これには、何か意味があるのだろうか。