殲-sen-
―――彼女は重要な手がかりになる。
その姿を目に焼き付けた後、急いで風呂場から出る。
置いてあった着替えは和服であり、着方が分からなかったが、適当に体に巻きつけると居間まで走った。
「女の人がいました!!あの、此処に来る前にあった―――!」
それだけ伝えると皆言いたいことは分かったようで、檜山さんが立ち上がり、
「話はあとだ。…いや、ここに戻る前に此れを読んでおいてくれ。此処について多少は分かる。」
田代さんに持って帰った書物を渡す。
「気を付けてね…。」
由実が心配そうに言うので、約束は守ると伝えると少しだけ安心してくれた。
私は小太刀を手に取ると、檜山さんも日本刀を手に持ち、案内しろと目で訴えられたので足早に玄関まで進む。
玄関の戸に手をかけた時、夕君のいってらっしゃーいと言う声が聞こえた。
それに対し、私たちはなるべく同じ調子で返した後、急いで小屋を出た。
「――こっちですっ!!」
私はさっき見た方向へ走りながら檜山さんを案内する。
女の人の歩行速度はゆっくりだったのでさほど遠くに入っていないはず。
私たちは前後左右確認しながら森の奥に入っていく。
先ほど女の人が立っていた場所につく。
「私が見たのはここです。」
そう言って私は足を止める。
檜山さんは歩調を一瞬だけ緩めて、
「だったら、もう少し奥にいるんじゃねぇか?」
それに無言で頷いて今度は檜山さんについて行く。
少し経つと、
―――チリン、と再び鈴の音が聞こえ出した。
それを檜山さんに伝え、今度は慎重に足を進めていく。