殲-sen-
―――人だった。
いや、建物できた時の異形の者かもしれない。
持たれている人のようなものはぴくりとも動かず、女の人にされるがままに引き摺られている。
俯せのために顔は分からないが、体付きからして男性のようだ。
見える範囲では所々に大きな傷があり、ボロボロで殆ど破けて意味のなさない衣服がその傷から流れる血に付着している。
その姿は見るに耐えないものだった。
彼女はその人形の大きさから察してかなりの重さであるというのに、其れを微塵も感じさせずに平然と引き摺っている。
ズルズルと人形の顔が地面に擦りつけられていても全く気にしていない様子だ。
それどころか、足取りはゆっくりではあるが、心無しか身に纏う雰囲気は揚揚としていて、この状況を楽しんでいるようにも見える。
…………。
其の事実を知り、彼女が私たちにとって安全かどうかの判断が付きにくくなった。
もし仮にアレが人ではなかったとしても、彼女の様子はとても普通とは思えない。
このまま接触を図れば、私たちの身も危険に晒されるかもしれない。
檜山さんに視線を送ると彼も同じ考えだったようでコクリと頷く。
そして追うのを中断しようと決めたとき、
ギャァァァッ――――!!
突然彼女が引き摺っているものが奇声を上げて暴れ出した。