殲-sen-
chapter2
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「……ん。」
――――寝ていたのだろうか。
私が女の人に会ってから、意識を取り戻したときには体を地面に横たえていた。
頭の中はまだぼんやりとしているが、目を瞑ったまま、地面の床の感触を探ってみる。
……?
すると、床のつるつるとした感触ではなく、さわさわと何かに触れる。
疑問に思いながら、うっすらと目を開くと、
「………え。嘘。」
視界いっぱいに広がるのは深緑の草だった。
さっきまでの床はどこにもない。
驚いて、体を起こしてあたりを見回す。
辺りは木々に囲まれ、視界が悪くなるほど薄暗く、空を見上げると満月が弱い光を放っていた。ヒュウっと、緩い風が木々を不気味に揺らしている。
―――自分は一体どうしたのだろうか。
自分の状況がつかめない。
何があった?
さっきまでの記憶を辿ると一番新しい記憶は女の人にあったことで…
――――私はあの女の人に何かされた。
それだけははっきり分かった。
私は女性が何かを唱えたときに感じた体の痺れを思い出す。
…でも、何のために?
私は彼女との面識はなかった。
もう少し正確に記憶を掘り起こしてみる。
私に会ったとき、彼女は顔を一瞬だけ歪ませていた。
あの時の嫌そうな顔は、自分が見つかったからだと言うことは確かだろう。
つまり、見られたくないことをしていたから、またはその場所に居るのを見られてしまったから、私をここに連れてこなければならなかった。
あの人は泥棒で、見つかったから山奥に私を捨てた。
安易すぎるが今はそれしか考えられない。
しかし、そうではないと頭の中のどこかで思っている自分がいる。
彼女の身につけている衣服や、彼女が私にした呪文のような何か。
普通じゃない、現実離れした何か。
あれは何なのだろう。
色々思案してはみるものの、何も思い浮かばない。
だけどまだそれに耽っていたいと思うのはただの現実逃避だということは分かっている。
今はこの状況を打開する方法を見つけることが先決だ。