一度目のくちづけは煙草のにおいがした
「みお、大丈夫?顔色悪いみたいだけど」
教室に戻ると、雪江がわたしに尋ねる。
「あ、うんっ、大丈夫、ありがとう」
「安心した。
あっ、河内先生が、あそこのプリント、運んどけってさ、
みおは先生にこきつかわれて大変だね」
HRが終わり、クラスメイトはぞろぞろと教室を出ていった。
わたしは、もう人気の無くなったC棟の廊下を、大量のプリントを抱えて歩く。
コンコン
「失礼します」
理科準備室に入ると、先生は相変わらずだった。
「ありがとうございます、そこに置いておいてもらえますか」
いつもと全く変わらない、会話。
時が止まってからも、わたしはしょっちゅう雑用を頼まれた。
しかし
あのくちづけには
お互い何も触れなかった。