一度目のくちづけは煙草のにおいがした
「もう暑くなりましたね」
先生は呟く。
わたしは窓を開けた。
外には
しだれ桜が青々としげっている。
もう夏がきたのだ。
「横須賀さん、あの本とってもらえますか」
「あ、はい」
難しそうな本を手渡すと、そのとなりにある本に目が止まる。
わたしは思わずその本を開いた。
【花言葉全集】
わたしは迷わず、ある花を引いた。
『しだれ桜』
花言葉は
『優美、ごまかし』
「先生」
わたしは口を開いていた。
ごまかしていていいのだろうか
いつまでも
わたしの時はとまったままだというのに