一度目のくちづけは煙草のにおいがした
「どうしました?」
「先生、煙草吸うんですか」
「僕ですか
吸いませんよ
煙草は苦手なもので」
じゃあ
わたしの口に残った
この煙草のにおいは‥‥?
わたしは涙をこぼした。
「横須賀さん‥!?」
時が歪みだした
止まっていた時間さえ
わたしは、穏やかで優しいものに感じていた
わたしは、まだ春の日の中にいた
心も 体も
季節が変わることを拒否した
なんとなく気付いてはいた
なのに
止まっていた時間さえもが
黒く塗り潰されていく
「どうして、キス
したんですか?わたしに」