zinma Ⅱ



この声は、毎日自分の精神を侵してくる。

自分を乗っとろうとしてくる。



だからこうして瞑想し、『選ばれしヒト』の飢えを抑えているのだ。


シギに説明したように、魔力と『呪い』は相反するもの。

魔力に集中している間は、『選ばれしヒト』の意思が弱まるのだ。

それを利用して、今まではなんとかやってきていた。

でも………


「もう……限界ですね……」

そう言って、レイシアは自嘲気味に笑う。



本当に、もう旅に出なければ、まずい。

早くシギを、コチラ側の世界でも生きていけるくらい強くしなければ、まずい。


自分は、生き残らなければならないのだ。

最後の最後。

最後の『呪い』をこの身体の中に取り込むまで。

生き残らなければ。

そしてその先には………





そこで考えるのをやめる。


また魔力に集中する。

そしてある試みをしてみる。


最近、シギの修業の合間に、ずっと研究をしていたことがあった。

魔術について。

ルミナ族の魔術は、魔法陣を描くことによって魔力を集中し、放つ。

だが、『選ばれしヒト』である自分には、もともと膨大な魔力が備わっているのだ。

ならば、自分の身体自体を魔法陣の変わりの媒体とすることはできないだろうか。

そう考え、思いついたのが。



声だ。



声だけで、魔術を発動することはできないだろうか。

それをずっとレイシアは研究していたのだが…

問題は、最も強く魔術を発動できる単語だった。

どの単語なら、一番効果的なのか。



そこでレイシアは一度深く息をすい、自分の喉に意識を集中させる。

魔力が喉に溜まるのを、意識する。



そしてまっすぐに空間を見つめ、放つ。









「リィラ。」









< 100 / 104 >

この作品をシェア

pagetop