zinma Ⅱ
魔力が、弾ける。
自分の言葉にこめられた魔力が、空間で弾け、世界に流れ込む。
その魔力に、自分でも満足げに笑う。
予想以上の出来栄え。
そして弾けた魔力が、世界の魔力と共に、また集結する。
女性の形を、形作っていく。
今レイシアが呼び出したのは、最もよくレイシアが使う、風の魔術。
だから現れるのは、いつもの風の妖精のはずだが…
どんどん形ができていくそれは、いつもの妖精とは比にならない姿だった。
今までは、15、16くらいの幼さの残る少女の姿で、妖艶な美しさを持ち、背中に蝶々のような羽を生やしていて、身体には何もまとっていなかった。
そこで、形が完成する。
大きな、女神だ。
大いなる母を思わせるような、女性の姿。
羽は、蝶々のようなものからもっと大きな、身体の2倍はあるようなものになり、子供のような印象のあった顔は18、19の最も美しい年頃の顔になっている。
身体には風を思わせる、流れるような服をまとっていた。
その髪も、肌も、服も、瞳も、緑色の魔力によって構成されている。
その女神が、緑色の瞳でレイシアをとらえる。
美しく、微笑む。
それにレイシアも微笑み、さらに自分の中の『選ばれしヒト』が今までで一番大人しくなったのを確認し、満足げにうなずく。
やはり、魔法陣を媒体とした魔術よりも、声を媒体としたほうが大きな魔力を使えるようだ。
というよりも、本当はルミナ族すら魔術を使うことは不可能なのだ。
ルミナ族はある特殊な『呪い』と、一族全体で契約していたために、その『呪い』の力によって魔術が使えた。
しかし本来、『黒き神の力』である『呪い』と、『白き神の力』である魔力は相反するものである。
それをルミナ族の『呪い』は、力付くで魔術を使う力を得ていたのだ。
だからこそ、『白き神の力』の塊を有した『選ばれしヒト』のほうが魔力と相性が良いのは当たり前であり、『呪い』の力が産んだ魔法陣という媒体では、魔力の本来の力は発揮できないのだ。