zinma Ⅱ
レイシアはここ数日、シギに魔術を使った戦闘の訓練を施していた。
少しずつシギが戦闘に慣れてきた日に、突然ここを発つとレイシアが言い出したが、シギはそれにあまり驚かなかった。
レイシアは十分すぎると言っていいほど、自分の訓練に時間をかけてくれた。
もう、行かなければ。
そうシギも思いはじめていた。
レイシアが出発と言っていた日。
いつも日が昇るときにはもう起きていたが、この日だけはもう少し早く、まだ暗いうちに起き、出発の準備をした。
お互いに荷物が小さいので、荷造りはすぐに終わる。
荷物を持ち、今から長い旅に出るとは思えない自然な動きで、レイシアは歩き出す。
確かにレイシアの旅は、もうとっくに始まっているのだから、それもそうか、とシギは思う。
岩がむきだしになっている斜面をひょいひょいと軽い身のこなしで降りていくレイシアの背中を追いかけながら、シギは聞く。
「目的地は?」
するとレイシアが足を止め一度振り返ると、にっこり微笑んで、
「王都ですよ。」
そう言うとまたぐんぐんと進む。
それにシギも、岩場になんの抵抗もなくあっさり着いて行く。
またシギが、
「王都に何か目的が?」
すると次はレイシアは振り返ることなく、
「いえ、目的というよりも、ただの目印のようなものです。
あくまでも『呪い』の回収が目的なので、王都に向かう途中に『呪い』に出会えれば回収、出会えれば回収、というわけですよ。」
それにシギはなるほど、と相槌をうつ。
そこで岩場が終わり、レイシアがシギが来るのを待つ。
シギも岩場を下り終わると、レイシアはまた続ける。
「まあ王都に行けばたくさんの情報に溢れているでしょうから、『呪い』だと思われる各地の噂を集める、という目的もありますよ。」
そしてまたレイシアは歩き始める。