zinma Ⅱ




朝食を食べて、いつもの空地へ行くと、もう2人はそこにいた。



いつものように、ファギヌはにこにこと微笑んでいて、カリアは無表情で腕を組んで立っている。



そこに僕はかけより、

「遅くなりました。」

と言って、頭を下げようとするが、それをカリアが手で制す。



それにカリアの顔を見ると、



「……今日が最後の訓練だ。」




と言う。


それに僕は、震える。

ついに、この日が。



しかし僕は、それに冷静に答える。


「……はい。」




カリアとファギヌが、悲しそうに顔をゆがめる。


そんな顔をしないで。


わずかに残った、最後の僕の感情が、ざわめく。

いつもは『選ばれしヒト』に侵食され、その姿を消している感情が、こういうつらいときだけ、顔を出す。



それに僕は、その感情を無理矢理抑えながら、


「………それで、何をするんですか?」


と聞く。




すると、目の前のふたりから、いままでとは比べものにならないくらいの、殺気が吹き出す。


無理に無表情にしているらしいカリアが、口を開く。





「……私たちを、倒せ。」









それに僕は、ああ、と思う。



ふたりを倒すのは、僕にはとても簡単だから。

もう倒すことができるから。




と、そこで。




カリアとファギヌが、それぞれ、今までに僕が見たことのない魔法陣を描きはじめる。


始めはそれがなにか、僕にはわからない。




しかし。



魔術が完成する。


魔法陣が光る。





そこで、僕は目を見開いた。












『選ばれしヒト』が、目を覚ました。







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