zinma Ⅱ
悪魔の囁き
私とファギヌは、お前も知っているように、ルミナ族に産まれた。
ルミナ族は300年前にキニエラ族に負けて以来、ある森の奥に隠れて暮らしていた。
今なお魔術を子孫へ受け継ぎ、森の周りに結界を張ることで、外からの侵入をふせいでいた。
私たちはひたすら魔術の修行をし、ただ平和に暮らしていた。
そして、たとえ森に隠れようと、『選ばれしヒト』を見守る役割だけは、守り続けていた。
ただここ300年の間に『選ばれしヒト』は現れず、ほんとうに村にこもって暮らした。
しかしあるとき。
なぜか、キニエラ族の王都の兵が、私たちの村に入ってきた。
原因はわからない。
ただもしかしたら、それも運命だったのかもしれない。
300年前の悲劇を繰り返したくない私たちは、何もせずに降伏した。
すると王都の兵は、言った。
『この村で一番の強者を王国に差し出せ。』
なんでも、そいつが王都の軍兵として働けば、何もしないと。
そこで上がったのが、私とファギヌだった。
私たちは、神の落とし子の再来、と言われるほどの魔力を有していた。
この村を守るためなら、と、私たちは喜んで王都に行ったよ。
しかし私たちが送られる戦場は、毎回ひどいものだった。
勝ち目のない戦争にばかり、出兵させられた。
魔術も体術も優れていた私たちは、何度もそんな戦争を勝利へと導いたけど。
人を殺せば殺すほど、私たちの心は死んでいった。
毎日毎日人を殺すだけの毎日。
早く死にたい、と何度も思ったよ。
だが、村のため。
私たちは戦い続けた。