zinma Ⅱ



この『呪い』と契約しなさい。





私はもちろん拒んだ。

『呪い』の恐ろしさを知っていたから。


しかし村の者は引き下がらなかった。




この『呪い』と契約する『代償』は、もう祖先が支払っている。

あとは『呪い』を解放し、自分の身体に入れるだけだ。

そうすればお前たちは、『すべてのものの時を止める呪い』によって、死なずに生きながらえる。

子供も、助かる。




それに私の意志は揺らいだ。

しかし、軍は私たちが死んだら、死体を軍に返すように求めてきていた。

私たちが万が一逃げたりしないように。



もし私たちが生きながらえたとしても、結局子供は産ませてもらえないし、また戦場に行かなければならない。

逃げたら村が焼かれる。




しかしそれに、村の者たちは言った。





戦に破れ、森に隠れること300年。

もともとこの世にあってはならない力を有する我々は、いつか滅びゆく運命なのかもしれない。

この『呪い』も、いつかは『選ばれしヒト』に返さねばならない悪の者。

どうせ滅びゆくのなら、せめて我々は『選ばれしヒト』を見守る役目を果たしてから消えたいのだ。

それができるのはお前たちだけだろう。

どうか、我々のためにも。


生きてくれ。








私は大声で泣いた。

目の前の絶望に。



村の者たちは、私とファギヌの血をとり、それで最後の模様を魔法陣に描き加えた。



魔法陣が光った瞬間、身体が変わったのがわかった。



痛みはない。

ただ、今までの自分とは違うという感覚。


みるみるうちに、血が止まった。


ファギヌも目を覚ました。








< 25 / 104 >

この作品をシェア

pagetop