zinma Ⅱ
この『呪い』と契約しなさい。
私はもちろん拒んだ。
『呪い』の恐ろしさを知っていたから。
しかし村の者は引き下がらなかった。
この『呪い』と契約する『代償』は、もう祖先が支払っている。
あとは『呪い』を解放し、自分の身体に入れるだけだ。
そうすればお前たちは、『すべてのものの時を止める呪い』によって、死なずに生きながらえる。
子供も、助かる。
それに私の意志は揺らいだ。
しかし、軍は私たちが死んだら、死体を軍に返すように求めてきていた。
私たちが万が一逃げたりしないように。
もし私たちが生きながらえたとしても、結局子供は産ませてもらえないし、また戦場に行かなければならない。
逃げたら村が焼かれる。
しかしそれに、村の者たちは言った。
戦に破れ、森に隠れること300年。
もともとこの世にあってはならない力を有する我々は、いつか滅びゆく運命なのかもしれない。
この『呪い』も、いつかは『選ばれしヒト』に返さねばならない悪の者。
どうせ滅びゆくのなら、せめて我々は『選ばれしヒト』を見守る役目を果たしてから消えたいのだ。
それができるのはお前たちだけだろう。
どうか、我々のためにも。
生きてくれ。
私は大声で泣いた。
目の前の絶望に。
村の者たちは、私とファギヌの血をとり、それで最後の模様を魔法陣に描き加えた。
魔法陣が光った瞬間、身体が変わったのがわかった。
痛みはない。
ただ、今までの自分とは違うという感覚。
みるみるうちに、血が止まった。
ファギヌも目を覚ました。