zinma Ⅱ
僕は魔法陣を描き始める。
僕の知らない魔法陣。
『選ばれしヒト』だけが知る魔法陣。
『呪い』を食べる魔法陣。
ひどく複雑な、大きな魔法陣。
それを僕が、『選ばれしヒト』が、描いていく。
青白く光る指をなめらかに動かして、複雑に入り組んだ、魔法陣を描く。
『選ばれしヒト』が、描き終わる。
頭の中の『選ばれしヒト』が指示してくる。
最後に呪文を言え、と。
その呪文を僕が知るはずがない。
なのに僕にはわかる。
どんどんどんどん、『選ばれしヒト』が僕を犯していくのがわかる。
僕たちが、ひとつになろうとする。
その一言を、僕はためらう。
『選ばれしヒト』とひとつになるのが、嫌だからではない。
そんなこと、とっくに決意している。
ただ、僕には見えるから。
この『呪い』を食べたら、師匠たちがどうなるか。
そこでまた『選ばれしヒト』が言う。
イイナヨ。
イエバ、スベテ オワル。
ボクノ イシキモ、キミト マザル。
ボクラハ、ヤット ヒトツニ ナル。
コンナフウニ、ボクニ サカラッテ
クルシムコトモ ナクナル。
僕は、思う。
いつかは、この日が来るとは思っていた。
だれかの『呪い』を食べなければならない日。
それによって、その契約者たちが、苦しむ日。
だって僕は、世界を救うと叫んで、人を苦しめる、化け物。
7年前に、その名を名乗ってから。
『選ばれしヒト』
神に遣わされた、悪魔なんだから。
最後の涙が、こぼれた。
サア。
『ひとつになろう。』