zinma Ⅱ
この2年間で僕が学んだことは、驚くべきものだった。
まず、『呪い』について。
『呪い』とは、人が人を傷つけ欲を満たすために、産まれた。
そのため、自然にあふれる魔力を使って発動する魔術とは違い、『ヒト』に直接作用することができるのだ。
『呪い』はそれぞれ違う力を持っており、『呪い』と『契約』を交わすことにより、その力を自分のものとして使うことができる。
例えば、異常な筋力を与える『呪い』もあれば、『ヒト』の心を見透かす『呪い』もある。
『呪い』は、その自分の力に相当するものを、『契約』する『ヒト』から奪い、食べる。
強い力を手に入れれば、それだけ大切なものが奪われるのだ。
そして、『選ばれしヒト』について。
『選ばれしヒト』は、そんな『呪い』を殺すために、神によって創られた。
だからこそ、『選ばれしヒト』には、『呪い』にはない力が与えられている。
それは、強くなり、上位種になった一部の『呪い』には可能な、『吸収』という能力に似ている。
『呪い』は『吸収』によって、自分より弱い『呪い』を食べ、その能力を自分の能力に加えることができる。
『選ばれしヒト』も同じように、『呪い』を食べ、そしてその力を自らも使えるのだ。
僕が6年前に、故郷の村で『吸収』した『呪い』は、筋力を上げるものだったらしく、その力を使って軍から逃げ出したようだ。
普通軍から逃げるなんて不可能なのに、僕にそれができたのは、『吸収』によって得た力のおかげだったらしい。
たしかに、朦朧とする意識の中で、だれかが僕の頭の中で言っていたのを覚えている。
走れ。
力を使え。
きっとまだ目覚める前の『選ばれしヒト』の意識が、実験による僕の命の危機に、反応したのだと思う。