zinma Ⅱ
カリアは、なんとか意識を保っているようだが、ファギヌにはもうほとんど意識がなかった。
ファギヌは頭に深い傷を負っているようで、傷が戻っていくにつれて、すごい早さで死が迫っているようだ。
カリアはそんなファギヌを見て、傷を負った自分の身体をひきずり、ファギヌのもとへ行く。
そして、ファギヌの冷たい頬に、そっと自分の手をそえる。
愛おしむように。
別れを惜しむように。
優しく。
するとファギヌが、薄く目を開ける。
焦点の定まらない金色の眼で、なんとかカリアを見つめる。
そして、ふっといつもよりもずっと弱い笑みを浮かべて、ゆっくりと腕を動かす。
自分の頬にそえられたカリアの手に、自分の手を重ねる。
カリアが、笑う。
泣きながら、笑う。
そしてファギヌが、こちらを見る。
口を動かし、小さな声で必死に何かを伝えようとする。
「……わた…たち……の……」
それを僕はさえぎり、うなずく。
「あなたたちのお子さんのことは、わかっています。会いに行きますよ。
どうやら………会わないといけないようですしね。」
すると、ファギヌは満足したように、ふっと力を抜く。
限界に近づいているようで、その瞬間に、全身の力も抜けたようだ。
ぐったりとして、カリアの手を握っていた手も、地面に落ちる。
それにカリアがひどく顔を歪め、ぼろぼろに泣く。
ファギヌの手を追って手を握ろうとしたとき、カリアが固まる。
ひどく咳込むと、口から大量の血が吐き出される。
カリアが、倒れる。
カリアが、苦しげに荒く息をしながら、奮える指で、小さく魔法陣を描く。
魔法陣が発動すると、なぜかカリアの声が聞こえてくる。
いつも、森に行った僕を呼ぶのに使っていた、空気を振動させる魔術だ。
どうやらそれを使って、もうほとんど聞こえないくらい小さな声を、僕まで届かせているらしい。