zinma Ⅱ
その赤い祠の中。
一部屋しかないその祠の奥、一段高くなった台の上に、今日も彼は静かに座っていた。
見た目は5歳くらいだろうか。
まだ幼さの残るその顔は、一瞬青年にも見えてしまうほど、大人びている。
紺色のつやつやと青く輝く、真っすぐな髪に、ひどく白い肌。
長いまつげのある瞳は、今は静かに閉じられている。
この村の伝統の正装で見を包み、正座をした膝の上に、行儀よく手を重ねていた。
目が閉ざされていて、さらに数本の蝋燭だけで明かりをとっている薄暗い祠の中であっても、彼の美しさは異常だった。
そこだけが輝いているような錯覚に陥るほど、少年の放つオーラは、人を感服させる力があった。
そのとき、祠の入口から、村の住民である老人が姿を現す。
「シギ様。」
静かに少年の名を呼ぶ老人の声に、シギと呼ばれた美しい少年は、閉じていた目を、開く。
美しい、金色の瞳をしていた。
少し切れ長の、澄んだ金色の瞳。
その瞳で、真っすぐに老人を見つめ、言う。
「どうした。」
5歳ほどの少年の見た目からは想像できない、落ち着いた、威厳のある声。
それに老人は少し頭を下げて、言う。
「来客でございます。」
それにシギは一度浅くうなずき、
「通せ。」
と言う。
老人はそれに軽く一礼してから、祠を出ていく。
それを見送り、シギは目をふせる。
もう6年もの間、この繰り返し。
ここに座り、やってくる旅人たちや村の者たちの相手をしている。
ある者は彼を見た瞬間に、その美しさに驚き、帰っていった。
ある者は力を見せてほしいと言った。
ある者は願いを叶えてほしいと言った。
それらに彼はできるかぎり答えた。
自分でもよくわかっていないこの力が、人の役に立つのならばそれでいいと。