zinma Ⅱ
ひどく美しい青年だった。
丈夫そうな少し汚れたコートに見を包んだ姿は、彼が旅人だということを連想させる。
しかしその顔は、旅人には不釣り合いなほど、美しい。
光りにさらされて、きらきらと白く輝き、少し癖のついたやわらかそうな金髪。
目は優しげに細められているが、その奥の瞳は、水色とも緑色ともとれる不思議な色をしている。
見た目は15、16歳くらいに見えるが、どこか達観したような雰囲気が、見るものに神秘的な印象を与えるようだ。
その青年は、一度シギを見つめると、ほんの一瞬だけ切なげな目をして、すぐに穏やかな微笑みを浮かべた。
「こんにちは。」
透き通るような、少し高めの声だ。
それにシギは一礼を返し、
「旅の方ですか?」
と聞く。
見るからに旅人だが、こんな若くきれいな青年が一人で旅をしているのが、不思議でならない。
それにまた青年はにっこりと微笑んで、
「そんなようなものです。」
と、あやふやな返事をする。
それについ、聞いてしまう。
「あなたの若さで一人旅ですか?」
それに青年は、
「若いからこそできるものでしょう。」
と言って笑うが、その笑みには底がない。
どこか空虚で、なにかまがまがしいものを感じるような、からっぽの笑みだった。
それにシギは、青年に座るようにうながし、聞く。
「それで、どうしてこんな辺境へ?」
これもわかりきっている質問だが。
青年は一度礼を言って台座の前に座り、それに答える。
「あなたの噂を聞いたもので。」
「噂?」
「はい。」
「それはどんな?」
それにまたにこにこしながら青年は言う。
「成長することなく、不思議な力を持った神童がいる、と。」
やっぱりな、と思う。
次はどんな願望を叶えさせられるんだろうか。